RSウイルス、赤ちゃんが重症になりやすいのはなぜ?
- 2026年10月15日
- 感染症
RSウイルス感染症とは
赤ちゃんが鼻水程度の風邪だと思っていたら、数日後に呼吸が苦しそうになり、慌てて受診した──RSウイルス感染症では、こうした経過をたどることが少なくありません。RSウイルスはほとんどのお子さんが2歳までに一度はかかる、とてもありふれたウイルスです。しかし、生まれて間もない赤ちゃんでは、重い症状につながりやすいという特徴があります。今回は、赤ちゃんがなぜ重症化しやすいのか、その理由と自宅で気をつけていただきたいポイントについてお話しします。
RSウイルス(呼吸器合胞体ウイルス)は、咳やくしゃみのしぶき、ウイルスがついた手や物を介してうつる、とても身近なウイルスです。多くのお子さんは2歳までに一度は感染します。感染すると数日間の潜伏期間のあと、発熱や鼻水といった風邪のような上気道の症状が数日続きます。約7割のお子さんはこのまま自然に回復しますが、残り約3割では、その後ウイルスが気管支の奥(下気道)まで広がり、細気管支炎(気管支の細い部分に起こる炎症)や肺炎といった重い症状に進むことがあります。この場合、強い咳や、ゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴(ぜんめい)、呼吸が苦しくなることによる顔色や唇の色の変化、咳き込んでの嘔吐、食事や水分がとりにくくなるといった様子がみられます。RSウイルス感染症そのものに効く特効薬はなく、治療は症状を和らげる対症療法が中心です。呼吸が苦しい場合には入院のうえ、酸素投与などで様子をみることもあります。
流行の時期は?(近年、変化しています)
以前は「RSウイルスは秋から冬(11〜1月頃)に流行する」といわれてきました。しかし近年は、流行のパターンが大きく変わってきています。厚生労働省の情報によると、ここ数年は夏から増加して秋にピークを迎える年がみられ、2021年以降は春から初夏にかけて増加し、夏にピークを迎える年もみられています。流行がいつ始まりどのくらい続くかは年や地域によって差があり、沖縄など地域によっては本州と異なる時期に流行することもあります。いったん流行が始まると2〜5か月ほど続くとされています。そのため「RSウイルスは冬の病気」と決めつけず、季節を問わず気道の症状が続くときには気にかけていただくことが大切です。
赤ちゃんが重症化しやすい3つの理由
①気道が細く、狭いこと
赤ちゃんの気管支はとても細いため、炎症によって粘液や腫れが少し増えるだけでも、年長のお子さんや大人よりずっと強く空気の通り道がふさがれてしまいます。
②免疫のしくみがまだ育っている途中であること
生まれて間もない赤ちゃんは、ウイルスと戦う免疫のしくみがまだ十分に発達していません。そのため、体の中でウイルスの増殖を抑え込む力が弱く、症状が強く出やすくなります。
③お母さんからもらった抗体が生後6か月前後で少なくなること
赤ちゃんはお腹の中にいる間に、お母さんから抗体をもらって生まれてきます。しかしこの抗体は生後2〜3か月ごとに半分程度に減っていき、生後6か月前後で最も少なくなります。ちょうどこの時期が、RSウイルス感染症が重症化しやすい時期と重なっているのです。
RSウイルス感染症とその後の喘息との関連
乳児期にRSウイルス感染症で細気管支炎を起こして入院したお子さんは、そうでないお子さんに比べて、その後に繰り返しゼーゼーする喘鳴や喘息を発症しやすいという報告があります。海外の追跡調査では、入院歴のあるお子さんで3歳・7歳・13歳の時点における喘息の発症率が一貫して高かったことが示されています。入院を伴わない軽い感染であっても、5歳時点での喘息発症リスクがやや高くなるとの報告もあり、乳児期のRSウイルス感染症は、その場の症状だけでなく、その後の健康にも関わっている可能性があります。
特に注意が必要な赤ちゃん
次のようなお子さんは、重症化のリスクがより高いことが分かっています。
・早産で生まれた赤ちゃん(特に在胎37週未満)
・生まれつき心臓や肺に病気がある赤ちゃん
・免疫の働きが弱い赤ちゃん
・生まれたときの体重が少なかった赤ちゃん
・家族に喫煙する方がいるご家庭の赤ちゃん
受診の目安
次のような様子がみられるときは、早めの受診をご検討ください。
・呼吸が速い、苦しそう(陥没呼吸・小鼻をひくつかせる呼吸など)
・母乳やミルクの飲みが悪い
・水分が十分にとれていない
・顔色が悪い、唇の色が青白い
・ぐったりしている、反応が鈍い
・呼吸が一時的に止まる(無呼吸)
とくに生後3か月未満の赤ちゃんでは、呼吸が速くなる・ゼーゼーするといった典型的な症状がはっきり出ないまま、急に状態が悪くなることがあります。少しでも様子がいつもと違うと感じたら、早めにかかりつけ医にご相談ください。
予防のためにできること
RSウイルス感染症の重症化を防ぐ医学的な方法には、大きく分けて、妊婦さんが接種することで赤ちゃんに抗体を届ける「ワクチン」と、赤ちゃんに直接投与する「抗体薬」の2つがあります。
2026年4月からは、妊娠28〜36週の妊婦さんを対象に、RSウイルスワクチン(アブリスボ)が定期接種として公費で受けられるようになりました。妊娠中に接種すると、お母さんの体内でできた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行し、重症化しやすい生後6か月頃までの時期を感染の初期から守る効果が期待されています。
生まれたあとの赤ちゃんに対しては、早産児や心臓・肺の病気があるなど重症化リスクの高い場合に使われるパリビズマブ(商品名:シナジス)やニルセビマブ(商品名:ベイフォータス)に加え、生後1年以内で、生まれて初めてRSウイルスの流行期を迎える新生児・乳児を対象に、クレスロビマブ(商品名:エヌフロンシア)といった新しいタイプの抗体薬も登場しています。対象となるかどうかは、かかりつけ医にご相談ください。
このほか、日常生活では次のような対策も感染の予防に役立ちます。
・石けんでの手洗い、アルコール消毒
・おもちゃなど赤ちゃんがよく触れるものの消毒
・咳や鼻水の症状がある家族はマスクを着用する
・家庭内での喫煙を控える
まとめ
・RSウイルスはほとんどのお子さんが2歳までにかかる、ありふれた感染症です
・赤ちゃんが重症化しやすいのは、気道の狭さ・免疫の未熟さ・お母さんからの抗体が減る時期が重なるためです
・流行時期は近年変化しており、季節を問わず注意が必要です
・早産児や心臓・肺に病気がある赤ちゃんは特に注意が必要です
・呼吸が苦しそう、飲みが悪い、無呼吸などがあれば早めに受診しましょう
・妊娠中のワクチン接種や、生後の予防的な抗体薬という選択肢もあります
参考資料:国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト「RSウイルス感染症とは」・厚生労働省「RSウイルス感染症に関するQ&A」
監修
石黒寛之 日本小児科学会 小児科専門医・日本内分泌学会 内分泌代謝(小児科)専門医
更新日
2026年10月15日

