こどもの熱中症、水分補給の「正しい方法」って?
- 2026年7月1日
- 医療安全
そもそも、なぜこどもは熱中症になりやすいの?
「水を飲ませているのに、子どもが夏バテっぽい」
「スポーツドリンクって飲ませていいの?」
「何をどのくらい飲ませればいいか、正直よくわからない…」
夏になると、こんなお声を外来でよく耳にします。水分補給の大切さはなんとなく知っていても、「何を」「どのくらい」「どのタイミングで」与えればよいのか、迷ってしまう保護者の方は少なくありません。
今回は、小児科の外来現場からみた「こどもの熱中症と水分補給」について、実践的にお伝えします。
大人と比べると、こどもの体は熱中症のリスクがもともと高い状態にあります。主な理由は3つあります。
①体温調節機能がまだ未熟
乳幼児は汗をかく機能が十分に発達していません。暑さを感じてから汗が出るまでに時間がかかるため、体の中に熱がこもりやすく、体温が上がりやすいのです。
②地面の近くにいる
身長が低いこどもは、大人よりも地面に近いところで生活しています。アスファルトの照り返しの影響を強く受けるため、大人が「32℃」と感じている環境でも、こどもの目線の高さでは「35℃」近くになっていることがあります。ベビーカーのお子さんは特に注意が必要です。
③自分で気づいて、伝えることが難しい
遊びに夢中になると、のどの渇きや体の不調に気づかないことがあります。また、「つらい」「暑い」を言葉でうまく伝えられないお子さんも多く、周囲の大人が気を配ることがとても大切です。
水分補給の「基本のき」── タイミング・量・飲み物の種類
「のどが渇いてから」では遅い
水分補給で最も大切なのは、「のどが渇く前に飲む」ことです。「のどが渇いた」と感じる段階では、すでに体の水分がかなり失われています。特に小さなお子さんは、「のどが渇いた」という感覚自体が大人ほど明確でないことも多いため、親御さんがこまめに声をかけて飲ませる習慣が大切です。
目安として、外で遊んでいるときは「15〜20分に1回」を意識してみてください。量は一度にたくさんではなく、コップ1杯(100〜150ml)程度を少しずつ、こまめに補給するのが理想的です。
何を飲ませればいいの? ── 飲み物の選び方
【場面別・飲み物の選び方】
・普段の水分補給(涼しい室内、軽い外出)→ 麦茶や水でOK
・屋外で30分以上活動、運動後、汗をたくさんかいたとき→ スポーツドリンクや経口補水液が有効
・熱中症が疑われるとき、下痢、嘔吐のとき→ 経口補水液(OS-1など)が最適
汗をかくと、水分だけでなく塩分(ナトリウム)も一緒に失われます。水だけを大量に飲むと、血液中の塩分が薄まって「水中毒(低ナトリウム血症)」になることがあるため、大量に汗をかいた場面では塩分の補給も必要です。
スポーツドリンクには水分と塩分・糖分がバランスよく含まれています。ただし、糖分が多いため、日常的に大量に飲み続けると虫歯や肥満のリスクになることも。「汗をかいたときの補給飲料」として活用するのが上手な使い方です。
「経口補水液」って何が違うの?
経口補水液(OS-1など)は、水分と塩分、糖分の比率が、腸から素早く吸収されるように計算されて作られた飲み物です。味が薄く感じる方もいますが、体が脱水状態のときほど飲みやすく感じるようにできています。
熱中症が疑われるとき、嘔吐や下痢が続くとき、高熱が続くときなどは、経口補水液が非常に有効です。「うちに1本ストックしておく」習慣をおすすめしています。
お茶や麦茶は水分補給になる?
麦茶や緑茶は日常的な水分補給として問題ありません。麦茶はカフェインを含まないため、年齢を問わず与えられます。ただし、緑茶や紅茶にはカフェインが含まれるため、乳幼児には避けたほうが無難です。また、カフェインには利尿作用があり、かえって水分を排出してしまう側面もあるため、汗をたくさんかいたときの補給には向きません。
どのくらいの量を飲ませればいいの?
高温環境や運動時の水分補給の目安として、小学校高学年(9〜12歳)では100〜250mlを20分ごと、思春期以降では1時間あたり1〜1.5Lが示されています。
ただし、これはあくまで運動時・高温時の目安です。年齢、体格、活動量、気温によって必要な量は大きく変わります。乳幼児など小さなお子さんについては、「20分に1回、飲める量を少しずつ」を基本に、様子を見ながらこまめに与えることを心がけてください。
水分補給の「量」のポイント
・一度にたくさんではなく、少量をこまめにが基本
・「まだ飲まなくていい」ではなく、渇く前に飲ませるを習慣に
・外出や運動のときは水筒を必ず持ち歩く
・年齢、体格、その日の暑さによって必要量は変わる。
「熱中症かも?」と思ったときの対処法
次のようなサインが出たときは、熱中症を疑ってください。
こんなサインに注意!
・顔が赤く、ぐったりしている
・ひどく汗をかいている、または全く汗をかいていない
・めまい、立ちくらみ、頭痛、吐き気
・手足がつる(こむら返り)
・呼びかけても反応がにぶい、ぼーっとしている
まず行う3つのこと
・涼しい場所へ移す:日陰やエアコンの効いた室内へ
・体を冷やす:首の付け根、わきの下、太ももの付け根(大きな血管が通っているところ)を冷たいタオルや保冷剤で冷やす
・意識があれば水分補給:経口補水液やスポーツドリンクを少しずつ飲ませる
すぐに救急車を呼んでください
・呼びかけても反応しない
・意識がない
・けいれんしている
・自分で水分が飲めない(ペットボトルのふたを自力で開けられないくらいぐったりしている)
※意識がない状態では、無理に飲み物を口に入れてはいけません。誤嚥(ごえん:飲み物が気道に入ること)の危険があります。
今日からできる!熱中症予防のポイントまとめ
・のどが渇く前に、こまめに水分補給を(目安:15〜20分に1回)
・普段は麦茶や水でOK。汗をかいたらスポーツドリンクや経口補水液を活用
・水だけの大量摂取は塩分不足になることも。塩分補給も忘れずに
・外出時は水筒を持ち歩く習慣を。家に経口補水液を1本ストックしておくと安心
・帽子、日よけ、通気性のよい服装で、暑さ対策もセットで
・小さなお子さんは「言えない」ことも多い。顔色・汗・様子を大人がこまめに確認する
熱中症は、正しい知識と予防習慣で防げる病気です。毎年「去年は大丈夫だったから」とそのまま過ごして受診されるお子さんも少なくありません。体が大きくなるにつれて活動量も増えますので、毎年の夏に向けた見直しを、ぜひご家庭でしてみてください。
(参考:こども家庭庁「みんなで見守り『こどもの熱中症』を防ぎましょう!」/国立成育医療研究センター「熱中症(熱射病)」)

